2万人の死者と30万人以上の避難民を生み続ける東日本大震災と福島原発事故。放射能によって故郷と生活を奪われた16万人もの人々の声も、事故収拾の最前線で命をかけて作業する人々の声も、国家ビジョン変革への声も、新しい基準の豊かさを希求する声も、全てを置き去りにしたまま、この国はまた元の道筋に縋ろうとしているかのようです。
脱原発を通し、新しい豊かさの実現を志す市民たちが神奈川で集います。神奈川でそれぞれに活動する団体が実行委を作り、福島現地からも仲間を迎え、「自分の頭で考え、互いに深く話し合いなが ら、よりよい社会を探るための」場を設けます。
第1回は2012年4月8日に開催しました。福島現地から障がい者と施設スタッフをお招きし震災直後の福祉施設の経験を共有したり、オーストラリアのロックバンドが支援CDの売り上げ50万円を現地NGO「子ども福島」にステージで手渡したりと、市民的な合力と出会いの場が作られました。
第2回目は2013年4月14日(日)に開催。地下ステージのハーベストムーンライブに講演を組み込み、参加者全員で考え、出会う場をより多く設けるようにしました。また5Fの展示室中央にインスタレーション「いのちの樹」を設置し、樹に吊るされた脱原発のバッジをカンパで買ってもらい、参加者が帰る時に胸に付けたそのバッジのメッセージが街に広がっていくというコンセプチャルアートも工夫しました。
第3回目は、2014年4月20日(日)に開催。5F展示場に長崎に投下されたプルトニウム爆弾のFAT-ManならぬTEPCO-Manが吊るされました。実物大のこのバルーンはこのお披露目後、反戦・反核・脱原発のデモで使える市民財として貸し出しをしました。また「福島原発かながわ訴訟原告団」の活動アピールや交流の場、また法律相談のコーナーなども設営し、神奈川への避難者やその実態を知りたい方々への情報提供の場を作りました。
第4回目は2015年6月21日(日)に開催。展示ものはいままでの継続で、この回は、特に被災者や被災地の声を聞くために、事故後4年目を迎える福島現地で活動する仲間二人(関久雄さん、大河原さきさんをお呼びして、福島と神奈川を繋ぐ場を開きました。
第5回は2016年6月12日。2030年代原発撤退政策は何処へやら、この国のベース電源に居座り続ける原発に引導を渡すには政治を変えなければと、7月の参院選に向けて場を開きます。施設内から街に出で市民に呼びかけようと、デモ申請して切腹ピストルズを先頭に「脱原発祈願練り歩き」を挙行。シンポジウムのパネリストや参加者ともども新横浜の駅前から会場まで、ムシロ旗に「一票の力を行使せよ!」と大書して、「脱原発」を叫びながら練り歩き、そのままコンサートへとなだれ込みました。
第6回は「安全に暮らせる社会とは?」をテーマに、メインのシンポジウムでは「脱原発の哲学(人文書院2016年)」を書かれた筑波大学の佐藤嘉幸さん(共著者は宇都宮大学の田口卓臣さん)をメインゲストに、日本の戦前、戦後史における産業構造と原発技術の関わり方や、原発産業や原発技術の特異さを人としてどう捉えるかという問題にフォーカスし、脱原発へ向かう政治や制度のあり方を市民が考え合う場を作りました。
【脱原発シンポジウム】
イタリア、スイス、オーストリア、ドイツ、デンマークなどの国々は脱原発の未来を選びとり
ました。けれど福島原発事故を経てもなお、私たちの社会は新しい未来を選ぶことができないままです。この現実を見据え、それを乗り越えるために開いてきた脱原発シンポジウムの、これまでのテーマと登壇者の一覧です
第1回と第2回は、集った各市民運動のグループや実委全体で幾つかの部屋を使って話し合う
場を同時分散型で開きました。
第1回のテーマを並べると『南相馬から福島、そして日本を考える~ある障がい者施設での、この1年の軌跡から』『くらしの中の放射能汚染地図-瓦礫、食べもの、そして…』『脱原発と自然エネルギーについて』同時開催のワークショップでは『非暴力トレーニング』『東林間放射能測定室』など。
第2回では、「原発を作らせない人々!ー 祝島から未来」「福島の土の上でー汚染に向き合い農を営む」「おしどりマコ・ケンの脱ってみる?」「賢く省エネ節電を!」「神奈川から二つの核にNOを!」などがテーマとなり、脱原発を願う市民の話し合いの場が作られました。この中のおしどりマコ・ケンさんの講演が大好評で、以後毎回のレギュラー企画となっていきます。
第3回では初めて脱原発シンポジウムを全体の統一企画の柱とします。この時のテーマは「原発災害3年目を問う!」と題し、城南信用金庫の吉原毅さん、元原発設計技術者の後藤政志さんをメインゲストにお呼びしました。この回から、司会は前田朗(東京造形大)さん(2015年のみ代打で久保新一(関東学院大名誉教授))に、マコさんと福島原発かながわ訴訟原告団団長の村田弘さんがレギュラーとして登壇するようになります。
第4回のシンポジウムの題は「脱原発をめざすーその道行きにあるもの」。福島から神奈川へ避難した方々、また神奈川から福島へ被災地支援で移住した方、また政府事故調の委員長代理を務められた柳田邦男さんをお迎えしました。
昨年の第5回は「3.11からこの国の未来を問う!」。メインゲストに福島原発告訴団団長の武藤類子さんを福島から、また元NHKプロデューサーで、当時、湘南地区の市民勝手連運動に係っておられた飯田能生さんをお迎えし、選挙直前の情勢分析も含め脱原発政策の実現をめざしました。
※脱原発市民会議かながわ
神奈川で脱原発を志し活動する市民グループ・個人の集まり。スペース・オルタが
事務局を担い、福島から神奈川への避難者の運動をサポートしながら、地域で脱
原発のための想いを寄せ合える場を担保するために活動してきている。市民運動
グループの他、地域作業所の職員やアーティストなどが参加している。
※ハーベストムーンLIVE
阪神淡路大震災時に、神奈川の自然食品店主たちがネットワークして食糧を「災害
弱者」といわれる障がい者施設に届ける勇気野菜プロジェクトを継続。その活動報
告会で、阪神からの被災者や復興支援者も呼んで数年開いていたコンサートの名前。
3.11以降、勇気野菜プロジェクトの復活でハーベストムーンLIVEも復活した。